種生物学会2025と和文誌


中野が「2025年度(第57回)種生物学会シンポジウム」(2025年12月19-21日@大学セミナーハウス・八王子)に参加しました。

京都大学の松岡さんと一緒に和文誌シンポジウム『生態系の土台:植物と微生物が織りなす世界』をオーガナイズしてきました。このシンポジウムは,野外生態系に生きる植物の生き様と切っても切れない存在である微生物に注目し,微生物とのやりとり(相互作用,共生,寄生,物質循環など)を通して植物のことを考えることを目的としました。

ご登壇いただいたみなさま(敬称略):
杉山 賢子(京都大学 フィールド科学教育研究センター)
橋本  陽(国立研究開発法人 理化学研究所 バイオリソース研究センター)
執行 宣彦(国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所)
中村 直人(京都大学生存圏研究所)
西田 帆那(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)
市橋 泰範(国立研究開発法人理化学研究所 環境資源科学研究センター)
南澤  究(東北大学)

種生物学会シンポ SSSB57 @ 大学セミナーハウス(八王子)
左から)松岡・市橋・西田・南澤・中村・執行・橋本・杉山・中野

ミクロやマクロ,植物から微生物,様々な視点から同じ現象を捉えている7名+2名が楽しくワイワイ話をできたので,単純にとても楽しかったです。種生物学会員のみなさんからもご好評をいただき,現会長の工藤洋さん(京大生態研)からも大変お褒めの言葉をいただきました。世話人冥利につきます。

種生物学会は,シンポジウム(他学会でいうところの年会に近いもの)で開催される和文誌シンポジウムについて,その内容をさらに膨らませた和文誌「種生物学シリーズ」を文一出版から刊行しています。種生物学会発足から続けてこられたこの伝統は素晴らしい書籍を次々と世に出してきました。私たちもこれから幾年かをかけて和文誌の編集作業を行います。そう遠くない将来に,ご登壇いただいた皆さま,そしてさらに業界の先鋭的な皆さまのアツい感情のこもった微生物に関する和文誌を発行できることになっています。今からとても楽しみです。

余談ながら種生物学会についてと,種生物学会との中野のご縁についても書いておきましょう。以下,面倒臭いので中野のことを私と書きます。

種生物学会は分類学会から派生した団体と伺っています。植物の「種」を考える際,形態や分子,交配可能性などだけから考えるのではなく,実際に自然に生きている個体の生き様(いわゆるフェノロジーなど)を考慮したうえで考えていくべきである,そんな思いから立ち上がったそうです。河野昭一先生が初代会長ですが,現会長の工藤さんはその河野先生の最後のお弟子さんだそうです。

私は学生時代,京大の理学部の植物学教室・植物分子細胞生物学分科で研究を行っておりました。ミクロに西村いくこ先生・岡田清孝先生(基生研に移られたあとは鹿内利治先生)・荒木崇先生(生命に移られたあとは小山時隆先生)・長谷あきら先生がいらっしゃり,マクロには植物分類を専門にされる戸部博先生がいらっしゃいました。ただただミクロに,共焦点顕微鏡で小胞体を眺めることばかりしていて,正直マクロに興味があまりありませんでした。ただ,京大・生態学研究センター(生態研)とカリキュラムをともにしていたので,修論発表や博士公聴会は生態研のマクロなみなさんと一緒にやっていて,こんな世界があるのだなぁとぼんやり眺めていたことを思い出します。

その後,ドイツで植物微生物相互作用に関する研究をはじめ,「野外環境にいる植物」のことをもっとしっかり理解したいと強く思うようになりました。そこでスペインにいるSoledad Sacristanと一緒にマドリードのシロイヌナズナをサンプリングしたり,少しずつマクロの勉強を始めました。一度日本に本帰国することが決まった際(結果的にはDFGのグラントが取れたので辞退してドイツに残ったのですが),生態研の工藤さんや当時立命館大学にいた荒木希和子さん(現在は滋賀県立大)と一緒にミクロとマクロをつなくプロジェクトを発案し無事採択されたことで,よりマクロに意識を傾けながらラボで実験を進める日々が続いていきました。ちなみに工藤さんとは学生時代に「植物系フットサル部」的なものがあり,ちょこちょこと一緒に球蹴りさせていただいていたご縁があったのでした。工藤さん・荒木さんとのプロジェクトについてはまた機会があれば・・・

そんな折,コロナ禍の中,種生物学シンポジウムをオンライン開催するのでぜひ参加しませんかと工藤さんからお誘いのメールがありました。時差的にかなり苦しいところだったのですが,一度しっかり勉強してみたいと思っていたところでもあり,喜び参加させていただきました。これが私と種生物学会とのご縁の始まりでした(実は昔に和文誌の用語解説執筆を手伝ったことがあるのですがそれはノーカウントで)。このオンラインシンポでたくさんの方と知り合い,また多くの学びをいただき,より強く「自然に近いところで研究がしたい」と思うようになっていきました。

その後は種生物学会のことはすっかり忘れてできることを淡々とやっていたわけですが,日本に帰国した直後に名古屋大学の村中智明さん(学生時代に小山研にいらっしゃって当時から仲良くさせていただいていました)からご連絡をいただき,和文誌編纂とそれに付随する和文誌シンポジウムのオーガナイズのお誘いをいただきました。相も変わらずラボ内で実験を進めながらも自然にどうやって出ていくかをモヤモヤと考え続けていたところでしたので,こんなに光栄なことはないと二つ返事でお受けしたところ,それから2年強がたってようやく和文誌シンポの開催にこぎつけたというのが,先週のことでありました。

「中野がなぜ種生物に?」というのはよく聞かれる質問なのですが,20年前に発表を聞いた生態研のみなさん,和文誌用語解説執筆,ポスドクでの分野チェンジ,一時帰国未遂,コロナ,北海道への本帰国,など,まだ書けないことも含めて本当にすべての点が一列にこの場へ繋がってきているような気がしてしまいます。なんの因果か,来年の種生物学会シンポジウムは妙高での開催であり,私が高校時代を過ごした学芸大附属高校の「妙高教育研究所(通称・妙高寮)」から徒歩圏内であると聞きました。20年どころか25年前から紡がれる縁を感じ切ってしまい,シンポジウムの締めくくりに「入会して来年も参加するので妙高で会いましょう」などと言い切ってしまいました。

中身のない自分語りでしたが,なんとなくこの経緯をどこかに書いておきたいなと思い,年末の用務から逃れて少し筆を取ってみました。種生物学会,とにかく最高に楽しいです。マクロの研究してなくても,自分の研究につながるネタが大量にころがっています。そして何より学生を含めてみなさんずっと楽しそうです。活気がすごいです。ぜひ,まずは一度参加してみてください。私も来年は学生連れて行けるかな。