先週2月20日,京都大学理学部セミナーハウスにて,記念すべき第1回ウキクサ研究会が開催されました。ひょんなご縁から中野も発起人に名前を連ねさせていただきました。中野研からは卒研生の小林哲史さんが,ウキクサを用いた植物ーマイクロバイオーター病原菌相互作用の解析について発表しました。
私たちがウキクサを用いることにしたのは「時系列サンプリングができる」というのが主要な理由です。シロイヌナズナの根に構築される微生物コミュニティを解析するには破壊的に根をサンプリングする必要があり,時系列解析のためには大量の個体を用意して「平均の時系列」をみることしかできません。液体培地上でクローナルに増殖するウキクサは,それ全体をひとつの個体(群体?)とみなすことで時系列サンプリングが可能になり,私たちが目指す「微生物コミュニティの機能ダイナミクスの動態」とその基本原理の解明に大きなツールとなります。
と,ツールとしての利用がキッカケだったのですが,いざ色々調べ始めるとさまざまに面白いことばかりがわかっています。ウキクサはサトイモ科の植物で,陸上に生息していた祖先植物から再び水棲性を獲得し,いわば「水に戻った」植物です。その過程でゲノムにコードされた遺伝子プロファイルに大きな変化が生じており,植物免疫関連遺伝子にも大きな変化が生じていることが報告されています(Baggs et al., 2022)。
今回のウキクサ研究会の参加者は「ウキクサ」というキーワードのみで集まった研究者たちで,発生制御からストレス応答,農業利用から生態学研究まで,本当に多様な研究発表が目白押しでした。なかなか普段思いが至らない部分まで知ることができ,私たちの見ている現象の裏にはこんな現象があるのだなとつくづく勉強になりました。
次回,第2回ウキクサ研究会の開催に向けて,世話人たちがすでに動き出しています。そう遠くない将来に詳細を発表できるといいなと思います。
第1回ウキクサ研究会をオーガナイズしてくださった京都大学の小山時隆先生と小山研のみなさま,本当にありがとうございました!学生時代散々小山研に乱入してお酒を飲んでいた時間がこんなことに繋がるとは思いもしませんでしたが,これからのウキクサ研究で少しでもあの頃の恩返しができれば幸いです。
ウキクサ,タノシイデスヨ,ミナサンモゼヒ!
